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ボディメカニクスとは、身体を意味する「body」と機械学を意味する「mechanics」を組み合わせた造語です。人間が身体を動かす際に骨や関節、筋肉がそれぞれどのように作用するかに焦点を当てた力学的関係を活用しています。
介護の場面では、寝返りや歩行など様々なシーンで利用者の身体をサポートしなければなりません。そんな時にボディメカニクスを習得しておけば、身体介助がスムーズになります。
ボディメカニクスは、身体介助における介護者の腰へのダメージを軽減するのに有効です。最小限の力で介助できるようになるので、介護者の身体的負担を軽減できます。年齢とともに筋力が低下しても無理なく介護の現場で活躍できるでしょう。長期的に介護の仕事を続けたい人は、ボディメカニクスを習得するのがおすすめです。
ボディメカニクスを用いた身体介助は、利用者の身体を力任せに動かす必要がないため、介護する側だけでなくされる側の身体的負担も軽くなります。お互いに無理な姿勢になる心配もなく、身体に痛みを抱える人の介護もスムーズになるでしょう。
力任せに身体を移動させず、不安定な姿勢になることもない介助は、利用者に安心感を与えます。安心感が生まれることで身体に力が入ったり、ストレスを原因とした問題行動や介護拒否なども軽減できるかもしれません。
「この人は介助が上手いから、安心して任せられる」と思ってもらえれば、介護者と利用者の間に信頼関係が生まれやすくなります。
利用者の身体を移動させたり持ち上げたりする時は、なるべく重心を低く保ってください。「重心を低く保つ」というと、膝を曲げて腰を落とす姿勢をイメージする人が多いでしょう。介護の場合も同じですが、この時骨盤を立てるのが重要です。
日本人の多くは、骨盤が後傾した状態で起立しており、そのまま腰を落とすと腰を痛める可能性があります。逆に、骨盤を立てた状態で腰を落とせば、安定感が増し腰痛予防にもつながるでしょう。
足は身体を支えるために最も重要な部位であり、介護においては安定した姿勢を保つのに欠かせません。身体を支えるための床面積を指す「支持基底面積」は、足を開くことで広く確保できます。
ベッド上での移動介助では、足先だけでなくベッドに手や膝を乗せる方法を採用することで支持基底面積を広げられます。これによって安定した姿勢を保てるとともに、身体に力を入れやすくなります。
利用者の身体を持ち上げる際は、背骨を中立姿勢で維持します。身体がねじれると腰痛の原因になるうえ十分な力を発揮できないため、動かす方向へ向かって肩と骨盤のラインを平行に保ちましょう。
背骨を曲げた状態での介助も腰痛を招くので、背骨をピンと伸ばしてください。息を吐く時には腹部の外側に圧をかけて、身体の軸を支えましょう。
身体介助の際は、無理に回転したり身体をひねったりすると腰や関節に負担がかかるため、身体を小さく回転させるのがポイントです。足を使って回転すれば、身体を大きく動かすことなく利用者の身体を移動させられます。
利用者にもなるべく身体を小さくしてもらうと、力の分散を防ぎ摩擦が少なくなるため、移動が楽になるでしょう。
利用者を移動させたり移乗させる時には、てこの原理を利用して身体の負担を分散させましょう。てこの原理を使えば最小限の力で身体を動かせます。手や膝が視点となるため安定した姿勢を保ちやすく、身体の一部分にのみ負担がかかる心配もありません。利用者の体重も活用しつつ、両手足を使ってまんべんなく力をかけてください。
手先や腰といった身体の一部にのみ力をかけるのではなく、腹筋や背筋といった体幹部や大殿筋やハムストリングスといった大きな筋肉も使うのが重要です。動かす方法に足先を向ければ簡単に重心移動できるので、そのまま持ち上げず水平に引くように利用者の身体を移動します。重力に逆らうように移動させようとすると腰に大きな負担がかかるため、注意が必要です。
動作はなるべくゆっくりかつ慎重に、無理のない姿勢でスムーズなリズムを保ってください。焦ってしまったり無駄な動きをしてしまうと、時間のロスや介護者・利用者のケガなどにつながります。一連の動作がなめらかで連続的に行えれば、より効率的かつ安全に行動介助ができるようになるでしょう。
自分の身体の制限や能力を把握しておくと、無理な動きを避けられます。自分よりも体重のある利用者の行動介助は全身にかなりの負荷がかかるため、リスクの伴う動作や持ち上げには細心の注意は払わなければなりません。そんな時に自身の体力や能力を過信してしまうと、介護者も利用者もケガをする可能性があります。
必要であれば支援具を使用したり周囲のスタッフと協力をするなど、安全かつ効率的な業務を行えるよう意識しましょう。
利用者が椅子に座った状態から立ち上がる時に、ボディメカニクスが役立ちます。重心を低くして利用者の身体をしっかりと支えてあげれば、腰への負担を軽減できるだけでなく、利用者も立ち上がりやすいです。
ベッドから利用者を起こす時に介護者は屈む必要があるので、腕や腰に大きな負担がかかります。身体へのダメージを減らすためにも、まずはベッドの高さを調整し、利用者に身体を小さくするよう頼みましょう。その後、介護者は利用者の首と膝に腕を入れ、おしりを支点に「てこの原理」を活用して起き上がらせてください。
安心して身を任せてもらうには、こまめに声をかけながら動くのがポイントです。利用者とコミュニケーションをとり、次の動作についての説明をしながら行いましょう。痛みがないか、身体に負担がかかっていないかなども確認しながら、一人ひとりに適した介護を実施するのも重要です。
介護において大切なのは、利用者ができることまで介護者が行う必要はないという点です。利用者の動作をすべて介護者がサポートすれば、効率的で利用者の身体にも負担がかからないように思えますが、自分でできることまで取り上げてしまうと、利用者の身体機能はどんどん衰えていってしまいます。そのため、利用者が自力で行えることは、継続してやってもらうようにしましょう。