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介護保険法は、3年ごとに改正されています。次回の改正は2024年です。2024年は、医療保険や障害者総合支援法も改正が予定されています。それらの関連法とあわせて大きな改正が盛り込まれるかもしれません。ここでは、2024年の介護保険法改正の論点を紹介します。改正内容を予想して、心構えや準備に役立ててください。
介護保険制度が施行されたのは2000年4月でした。地域包括ケアシステムの推進を掲げた2012年度以降、3年ごとに改正されています。3年ごとに改正されるのは、変化の激しい高齢者の現状を踏まえながら、社会ニーズに合う制度であるため。医療は進化して高齢者の人口が増え続けていますが、働き世代の人口の減少が著しいことから、状況に合わせて介護保険制度を維持していかなければいけません。定期的な見直しにより、高齢者を取りまく状況や社会ニーズの変化に柔軟な対応ができるよう、3年ごとの改正になっています。
介護保険制度の改正は、介護保険制度やサービスのありかたについての調査が行われた上で、大きなテーマを決め、厚生労働省と財務省の部会で意見交換が行われるという流れです。財務省は支出を抑える視点から、厚生労働省は社会的ニーズや現場の現状の視点から意見が出されます。
2024年の介護保険法改正の論点を解説します。2023年4月3日現在、まだ結論は出ていません。あくまで、検討中の内容であることに注意してください。法改正が実施されるのは、2024年4月です。
増え続ける介護費を補うために、利用者負担を原則1割から原則2割にしたいという提言が大きな論点になっています。
現在の基準は、本人所得160万円以上220万円未満は2割負担、220万円以上は3割負担です。1割負担者は全体の90%となっています。その基準を引き下げ、給付額を抑えるのが狙い。
利用負担割合の基準は、2023年夏頃に決定する予定です。現状、ほとんどの利用者が1割負担のため、働き世代の負担感や世代間の不公平感につながっています。こうした問題を解決するために、2024年改正で2割負担、2027年改正で3割負担になる可能性があります。介護の現場の立場からは反対の声も多く見られますが、自己負担額が増えることによる利用控えを考慮しておく必要があるでしょう。
自己負担額に関連するものでは、ケアプラン作成の有料化も検討されています。これまでは積極的なサービス利用を促す観点から利用者負担なしの例外的取り扱いでしたが、在宅サービスが定着したことから、利用者負担ありにしたい意向です。現状として、在宅サービスのケアマネジメント費用は利用者負担なしとなっているのに対して、施設サービスにおけるケアマネジメント費用は利用者負担が発生するサービス料金に含まれています。在宅と施設利用で公平性が保たれていません。また、利用者が費用を負担するようになれば、ケアプランに関心を持ち、ケアプランの質の向上が期待できます。一方、本人や家族の意向を反映するようになるためサービスの種類や量の適性化が困難になる可能性が懸念点です。2024年改正では見送られ、2027年改正で結論が出る予定となっています。
福祉用具貸与のみの利用の場合にケアプラン費をカットするという提言も出ています。福祉用具貸与のみのサービスは、他のサービスと比較して労力が少ないというのが財務省の認識です。サービス内容に応じた報酬体制を求めています。
また、手すりや杖などの廉価な福祉用具を販売に切り替えることで、居宅介護支援費をカットするという提言も出ています。
要介護1・2の軽度要介護者を対象に、介護保険サービスから市町村が行う「地域支援事業」に移行する議論も行われています。
軽度の要介護者は、要支援者と同様に、地域の実情に応じた多様なサービス提供を行える地域支援事業へ移行するべきとの意見が財務省から示されました。
地域支援事業に移行すれば、利用者にとっては費用負担が軽くなる可能性もあります。また市町村の判断で報酬や基準を決めることができるようになり、介護費の抑制や人員基準緩和が期待できます。
しかし、要支援者の訪問介護や通所介護の実施団体において、人員拡大は進んでおらず、また、日常生活動作は自立していても認知症が進行しているケースも少なくないことから、在宅生活の継続には専門的なサービスが必要です。地域支援事業に移行することで重度化を招く恐れがあるとの反対意見が多いことから、2024年改正では見送りが決定しています。2027年の改正時に結論が出るため、今後の議論に注目したいです。
介護保険制度が開始した当初は、競争による介護サービスの向上を目的として、多くの法人が介護業界に参入しやすい状況でした。しかし、小規模法人が多数を占める現状、サービスに質の向上が不十分で、業務効率化が進まないといった問題が指摘されています。財務省の考えでは、大規模法人ほどスケールメリットが働き、質も経営の効率も良いとの認識のようです。
入居者が共同の部屋で暮らす「多床室」の室料は、特別養護老人ホームを除き、相当分が保険給付に含まれていました。居住費の公平性の観点から、これまで室料負担がなかった介護老人保健施設・介護医療院・介護療養型医療施設において、室料相当額を基本のサービス費用から外す議論が行われています。
一方、介護老人保健施設・介護医療院・介護療養型医療施設は、居住の場だけではなく、医療ケアも行われる施設という側面もあるため、保険給付からの除外に慎重な意見も出ており、議論の方向は不透明です。
慢性的な人材不足の介護業界。その対応として、人材基準の見直しが議論されています。現在、入居者3人に対して職員1人という基準を「4人に対して1人」に緩和するという内容です。ICTやロボットを活用して人員基準を緩和する方向で2022年に実施される予定でしたが、関係団体や現場からの強い反対により実施に至っていません。2024年改正に含まれるかも微妙なところですが、論点のひとつにはなるでしょう。
2024年の改正ポイントを知るために、2021年度の改正ポイントを振り返ってみましょう。2021年度の主な改正内容は、以下のようなものでした。
介護事業者にとっても利用者にとっても大きな関心事となっているであろう「自己負担割合」についての決定は、2023年夏頃の予定です。原則2割になるか、現行のまま維持するのかが決まります。
介護保険制度改正にあわせて、介護報酬の改正も実施されます。前回の2021年4月改正では2021年1月に介護報酬の点数が公表されたため、今回も1月頃の公表になることが予想されています。
その後、制度改正実施前の改正内容や解釈を示す「制度改正に関するQ&A」が厚生労働省から公表されますが、おそらく2024年3月頃になるでしょう。
改正された介護保険制度の実施は、2024年4月からスタートします。1年を切っているため、今後の議論の方向性や決定事項にアンテナを張り、改正に対応できるように準備してください。
2024年の介護保険法改正において、大きなポイントになりそうなのが、利用者の自己負担割合です。これまでほとんどの利用者が1割負担でしたが、2024年改正で2割負担になる可能性があります。介護事業においては福祉用具貸与のみのケアプラン費カットも気になるポイントではないでしょうか。高齢者が増える中で、介護費用の抑制とサービスのバランスは日本の社会全体にとって重要な論点です。今後の議論の推移を確認しながら、改正内容に応じた対応ができるように準備していきましょう。