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介護現場における利用者の暴力・暴言に対応するために、まずはそのような行動に至った原因を知ることが大切です。原因を正しく把握することによって、それぞれのケースに合わせた適切な対応ができるでしょう。ここでは、以下の4つの原因について考えてみます。
認知症の場合、利用者は徐々に認知機能が低下して感情のコントロールが難しくなるため、些細な事にも過敏に反応する場合があります。認知症になる前と比べて感情的な性格に変化したり、声を荒らげる・暴力に訴える・周囲に当たり散らすなど、暴力や暴言に繋がりやすい状態となるのが特徴です。
人間は老齢になると身体の機能が低下していき、若い頃に比べて体が思うように動かせなくなります。それについて理解を得られなかったり、言葉で伝えるなど何らかの方法で発散できなかった場合、不安や苛立ちへと繋がりやすくなるので、小さな事がきっかけで突然爆発してしまうというケースが少なくありません。
社会との接点が希薄になることが原因です。老齢になると仕事を引退して、家で過ごすことが多くなります。誰かと会ったり、どこかへ出かけたり、何かの活動に励んだりする機会も少なくなるでしょう。そうすると、社会的な自分の役割がなくなったと感じて、自尊心が失われ、不安・苛立ち・怒りに繋がりやすくなります。
利用者によっては、そもそもハラスメントをしている意識がないという人もいます。高齢者になる前から、元々暴言を吐くクセがあったり、手が出やすかったり、イライラしやすかったりした人もいるでしょう。こういった利用者の場合は、相手が傷つくような暴力・暴言に対しての意識がないため、ハラスメントを受けた側が何らかの形で拒否反応や意思表示をしない限り、そのまま続けてしまう可能性があります。
上記で示した原因に基づき、利用者の暴力・暴言への対応について考えてみましょう。
まず基本的な前提として、利用者の暴力・暴言に対しては絶対に1人で対応してはいけません。ハラスメントを受けた本人は精神的に動揺している可能性が高く、1人で冷静に対応することは難しいでしょう。かえって問題をこじらせ、余計に利用者の言動をエスカレートさせてしまう可能性もあります。以下で示すとおり、上司や医師などの周囲に相談をして、全員で連携して対応することが大切です。
ハラスメントへの根本的な解決を図る際には、自身や利用者に関わる全員で連携することが大切。現場で実際に暴力・暴言を受けた時の対応が重要となります。
利用者の行為を受け流したりせず本人へ明確に「やめてください」と拒否反応を示すことで、職員の保護という目的以外にも、利用者本人に良くないことをしているという事実を伝えられるため、それ以上のエスカレートを防止する効果が期待できます。
ただし意思表示をする際には、逆上してしまう可能性も考慮して、利用者の性格をよく考えながら言葉を選ぶようにしましょう。
先に述べたとおり、利用者の暴力・暴言に対して1人で対応するのはNGです。仮に些細なことだと判断しても、1人で抱え込まず、上司に相談・報告をしてアドバイスをもらいましょう。1人で思い悩むよりも周囲と情報を共有したほうが気持ちも楽になり、解決策が見つけやすくなります。また他の職員にモデルケースとして共有ができるので、今後同じようなことが起こった際の対応もスムーズです。
利用者の暴力・暴言が認知症に起因するものであるなら、医師に相談するのも一つの方法です。認知症は脳の細胞が壊れる「病気」の一種ですから、改善にあたっては、専門的な知識に基づいて医学的なアプローチが必要になります。また同様に体調不良が原因の場合にも、医師に相談することで解決策が見つかりやすくなるでしょう。
利用者の気持ちを安定させる方法として、「ユマニチュード」の導入も有効です。ユマニチュードとは「人間らしさ」を意味するフランス発祥の言葉で、認知症に対するケア技法を意味しています。介護者側の都合やマニュアルを一方的に当てはめず、利用者本人の気持ちや要望に沿ったケアを心がけることで、本人の尊厳を守り、気持ちを落ち着かせることに繋がります。
利用者から介護職員への暴力・暴言には様々な原因がありますが、それに対する対処法も同様に存在しています。これらの原因と対処法を理解し、また上司や医師など周囲に相談することで、慌てることなく、落ち着いた適切な対応を取れるようになるでしょう。